
「今はインフレか?」
と聞かれたときに
「明らかにインフレだ」
と答える方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか。
おそらくほとんどの方が、
- わからない
- インフレではない
このように答えるのではないかと思います。
今回は、この認識の乖離とその原因についてお話ししていきます。
現代のインフレは『隠れインフレ』
前回お話しした通り、日本は今現在インフレの真っ只中にあることは間違いありません。
なぜ私が今がインフレ期だと断定しているのか、『インフレとは何か』という仕組みと合わせてお話ししていきます。
にもかかわらず、多くの方がインフレであることを認識できていないのは「実感がないから」ではないでしょうか。
皆さんにとっての実感とはおそらく、
- 消費が増えること
- 給料が上がること
この二つに尽きるかと思います。
消費は増えるどころか倒産する企業が増え、給料は上がるどころか残業代の削減で減らされる・・・
そんな状況ではインフレを実感できないのも無理はないのかもしれません。

ただ、ここで注意しなければならないのは、
現代のインフレは『実感』と『実際の状況』が必ずしも同じではない
とういうことです。
対して、バブル期のインフレは『実感』と『実際の状況』が同じでした。
この違いは、第二次安倍政権のインフレ政策が大きく影響しています。
バブル期と現代のインフレの違い
前回、インフレには二つの仕組みがあることをお話ししましたが、現代のインフレはバブル期のインフレとはアプローチの仕方が異なります。
それは
- 物価上昇を主軸にしたインフレなのか
- お金の価値を下げる事を主軸にしたインフレなのか
この違いです。

1990年までのバブル期のインフレは、物価も上がりましたが、人口増、通貨高もともない経済は大きく拡大しました。
つまり、
『物価上昇を主軸にしたインフレ』
でした。
それに対し現代のインフレは、
『お金の価値を下げる事を主軸にしたインフレ』
と表すことができます。
その理由は、第二次安倍政権の
- 財政政策
- 金融政策
です。
アベノミクス三本の矢
この言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
アベノミクスはデフレ脱却と富の拡大を目指した経済政策です。
この中には様々な政策が盛り込まれているのですが、要点を大まかにすると、
- 財政政策→国民の給料を増やす
- 金融政策→国内のお金の総量を増やす
この2点です。
今回は、この中の『財政政策』についてお話しします。
アベノミクスの財政政策
アベノミクス発表当時、安倍前首相は
「10年後に1人あたりの国民総所得を平均150万円増やす」
と言う目標を掲げました。
所得とは簡単にいえばお給料のことです。

『何もせずに給料が上がる』
これほど嬉しいことはありません。
しかし、これは残念ながら、
ただ単純な給料アップではありません。
ここで重要なのは、あなた一人ではなく、
日本の全国民の給料がアップするということ
です。
つまり、額面上の数字は増えますが、相対的にみればお金の価値は一切変わらないことを示しています。
実際に、この宣言を皮切りに、日本全国で最低時給が上がり、大手ハンバーガーチェーンのアルバイトでも、時給が1,000円を超えるようになりました。

もちろん企業も何もないところから給料を出すことはできません。
すぐに給料を上げた分だけ企業を成長させることは難しいため、結局物価、サービスの価格を上げていかざるを得ません。
また、収入が上がることで日本全体の消費意欲が上がり、需要に対して供給が少なくなるため、これも物価の上昇を招きます。
労働者の視点からすると、給料は上がったけど結果的に生活水準は変わらない。
つまり第二次安倍政権の財政政策は、全国民の給料をアップさせることにより、
『お金の価値を下げるインフレ政策』
を取っていることがわかります。
お金の価値を下げるインフレ
『お金の価値を下げるインフレ政策』は、バブル期のような分かりやすい好景気でもなく、それをほとんどの人は直接感じることはありません。
一番身近な賃金上昇も突然大きく上がることもありません。
じわじわと見えないところで、しかし確実にインフレは進行しています。
経済政策や金融政策など馴染みのない用語だとスルーしてしまいがちですが、「給料」など身近なところから日本政府の政策を見ていくと、かなり現実味も実感も出てくるかと思います。
日本政府の政策や、経済の流れが分かると、少し先の未来や、有効な資産形成の方法が明確になってきます。
次回は、今回お話しできなかったアベノミクスのもう一つのインフレ政策『金融政策』についてお話しをしていきます。
『金融緩和』。投資家にしか縁のない言葉だと思いがちですが、じつは日本の全国民に影響を及ぼす、無視することできない政策です。