
第二次安倍政権が日本経済をデフレから脱却させるために掲げた政策『アベノミクス』の一つが
『金融政策』
です。
この金融政策により大規模な金融緩和が2013年、日銀から発表されましたが、この金融緩和の発表をしただけで、為替市場には大激震が走りました。
金融緩和の内容を正しく理解できた人は、即座に資産形成の方向性の舵を切ったことでしょう。
しかし、それができたのは一部の投資家のみに過ぎません。
多くの方々がその内容の重大性を知ることなくスルーしてしまっていました。
実はこの『金融政策』、投資家だけでなく日本の全国民の生活に対して大きな影響を及ぼすものなのですが、それに気づいている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
今回はまず、この『金融緩和』とはどんな政策かを解説していきます。
量的・質的金融緩和の導入と影響
前回、第二次安倍政権がデフレ脱却のため『アベノミクス』という経済政策を打ち出したことをお話しました。
インフレは起こっている?起こっていない?この認識の乖離はどこから生まれるのでしょうか。
このアベノミクス発表後の2013年4月、
日本銀行の黒田総裁は過去にない大規模な金融緩和を発表しました。
日本銀行:「金融政策に関する決定事項等2013年」より
内容を分かりやすく簡略化すると下記の通りです。
- マネタリーベースを2倍に
- 国際を買う量を2倍に
- 物価上昇率2%を2年で達成
この発表があった当初、新聞で報じられたのはもちろんのこと、ニュース速報も流れました。
為替市場も大きく反応し、
2013年4月の変動で、金融緩和を発表してからたった1週間で、1ドル92円から1ドル100円近くまで為替が約8円も動くという、前代未聞の為替変動を記録しました。

ここまで大きな動きがあったにも関わらず、この金融緩和の内容を見て、日銀や日本政府が何をしようとしているか、読み取った方は結局ごく一部でした。
なぜ、ここまで大きな変化に気づくことができないのか。
そこには2つの要因が考えられます。
- 日銀が発表した用語が専門的すぎる
- 発表内容が自分自身の生活に結びつくことを想像できない
ではここからは、金融緩和の肝である『マネタリーベース』について解説していきます。
マネタリーベース
金融緩和の肝である『マネタリーベース』。
日本銀行のホームページにわかりやすく書かれているのですが、
マネタリーベース=
日本銀行:広報資料より
「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」
「日本銀行券発行高」、「貨幣流通高」とは、現在日本国内に出回っている紙幣と貨幣の合計。
「日銀当座預金」とは、各金融機関が持っている日本銀行の当座預金のことを指しています。
つまり、マネタリーベースとは、日本銀行が国内へ供給しているお金の総量を意味します。
マネタリーベースが増加する
日本銀行の黒田総裁は、アベノミクスの金融政策を受けた2013年4月、金融緩和の中身として
「マネタリーベースを2年間で2倍にする」
と発表しました。
「日本銀行が国内へ供給するお金の総量を2年間で2倍に増やす」
と宣言したのです。
実際にこの目標は、2年を待たずに達成されることになります。

金融緩和発表直前、2013年4月2日のマネタリーベースが約135兆円。
これが、2015年1月6日発表時には、当初の2倍を超える約276兆円に増加していました。
つまり、
『お金を大量に印刷して、お金の供給量を2倍にした』
と言っているのです。
さらにこのマネタリーベースの増加は止まることを知らず、2021年1月現在では、約606兆円、当初の約4.5倍にまで至っています。
日本銀行:「統計」より
言葉にすると簡単ですが、これを以前お話したインフレの仕組みと照らし合わせると、実は投資をせずに普通に生活している方に関しても、かなりの影響がある現実が見えてきます。
まとめ
今回のお話しで押さえておかなければならないポイントは、
- マネタリーベース=日本銀行が国内へ供給しているお金の総量
- 量的・質的金融緩和でマネタリーベースが倍増
次回は、このマネタリーベースの倍増が与える、国民への影響についてお話ししていきます。