
『アベノミクス』
言葉と中身は難しく聞こえますが、前回までお話ししてきたように、そこには一貫したインフレ加速のロジックがあります。
- お金の供給量を増やして
- お金の価値を下げて
- 物価を上げていく
安倍政権は、金融政策でマネタリーベースを増やし、財政政策で給料上昇を促すことで『お金の価値が下がるインフレ』を発生させる仕組みを作りました。
少し時間を置いて給料や賃金が上昇し、
また少し時間を置いて物価が上昇、
さらに時間に差はありますが不動産の賃料も上がってきています。
アベノミクスが発表されてからの7年間、このロジックはしっかり機能し、安倍政権の目標は達成されたと言って良いでしょう。
インフレは起こっている?起こっていない?この認識の乖離はどこから生まれるのでしょうか。
『金融緩和』。投資家にしか縁のない言葉だと思いがちですが、じつは日本の全国民に影響を及ぼす、無視することできない政策です。
さて、徹底的にインフレ政策を打ってきた安倍政権でしたが、そもそもなぜここまで強引にインフレを起こそうとしたのでしょうか。
『景気を良くするため』
たしかにそれも理由の一つですが、実はアベノミクスには、表向きには語られていない『真の狙い』があるのです。
今回はその『真の狙い』について解説していきます。
国の借金
『国の借金』
いくらあるかご存知でしょうか?
2020年9月末時点で約1,189兆円です。
さらにコロナ対策で増えた支出も重なり、国の借金としてのしかかっています。
国の借金の捉え方
まず、この『国の借金』についての捉え方ですが、
- 誰が
- 誰に対して
借金をしているのかを明確にする必要があります。
よく国の借金を、
『国民一人当たり〇〇〇万円の借金を負っている』
と表現している報道をみかけますが、これは全く見当違いな数字です。

これには
『国民1人当たり』
という表現を使うことで国の借金を自分事に置き換え、『国の財政は厳しい』というイメージを植え付け、『増税』の理由の一つにする、という戦略が隠されているのですが、国債についてしっかり理解できていればこの報道のおかしさにも気付くかと思います。
国の借金は端的に言えば国が国民から借りているお金です。
政府は国債を発行し銀行や保険会社、日銀、または個人に国債を買ってもらうことで資金調達します。
このとき、銀行や保険会社は誰のお金を国債に変えているのでしょうか。
それは、企業や個人が銀行に預けている預金、保険料です。
つまり、『国民1人あたりの借金』という表現は逆。
国民1人あたりで表現するなら『国民1人あたりが国に貸し出している金額』と表現すべきです。
アベノミクスの『真の狙い』
政府は国債という形で、企業や国民から1,000兆円を超える莫大なお金を借り入れています。
普通に考えれば1,000兆円を超える借金なんて、考えるだけでも気を失いそうです。
負債を減らす『インフレマジック』
しかし、ここでインフレが起こるとどうでしょう?
インフレは「お金の価値が下がる」というお話しを何度かさせていただきました。
なぜ私が今がインフレ期だと断定しているのか、『インフレとは何か』という仕組みと合わせてお話ししていきます。
『量的・質的金融緩和』これは投資家だけに影響する話ではありません。普通の家庭の生活にも影響を及ぼす政策なのです。
- 100円で買えていたパンが200円出さないと買えなくなる
- 預貯金に額面通りの価値がなくなる
預貯金に額面通りの価値がなくなるということは、今、100万円を預金しつづけていた場合、何年後かにはその100万円をすべて使ったとしても、今の70万円分程度しか物を買うことができなくなっている可能性がある、ということです。
これを『借金』に置き換えると・・・
100万円の借金が、何年後かには今の70万円程度の価値に下がる、ということです。
さらに何年後かには50万円、またさらに何年後かには20万円・・・。
お気づきでしょうか?
借金の額面は変わることはありませんが、一切返済していないにも関わらず実質的には借金は減り続けるのです。
こうなってしまえば、いくら借金があっても関係がなくなります。
資産を増やす『インフレマジック』
さらに、国は日本全国に国有地や個人では考えられないくらい多数の不動産を保有しています。
インフレが起こると、結果的に物価も上がるというお話しをさせていただきましたが、インフレによる物価上昇は限定的なものではなく、日本に流通するあらゆるモノに及ぶため、当然不動産の価格も上がることになります。
実際に日銀の金融緩和発表以降、特に区分マンションを中心に、不動産の価格は上がり続けています。

アベノミクスの真の狙い
日本政府はインフレを起こすことで、
- お金の価値を下げ、借金を目減りさせる
- 物価を上げ、不動産価格を上昇させる
この流れを作り出すことができました。
「負債を減らし」「資産を増やす」
これは、一般企業や個人の資産形成でもよく用いる『バランスシートの改善』そのものです。
つまり、
国のバランスシートを改善し、財政を健全化させること
これこそが、アベノミクスの真の狙いと言うことができます
これが会社であれば、
安倍元首相は会社の業績を回復させ、赤字を減らし財務も改善した凄腕の経営者、と伝説を残したことでしょう。
上がらない金利
インフレが起こると、通常であれば金利も上昇します。
これは、インフレが大きくなりすぎると物価が際限なく高騰しハイパーインフレを引き起こすリスクを秘めているため、日銀が政策金利を上昇させ融資を引き締め、市場に必要以上にお金が出回らないようにする動きに起因しています。
金利が上がると、例えば、定期預金の利率が上がり、お金を預けているだけで、金利分だけ預金額が増えます。
逆に、借金の利率も高くなります。
通常、これだけインフレが起きていれば、金利上昇もするはずですが、今現在、日本はどうでしょうか?
定期預金の利率は上昇しているでしょうか?
低金利のまま動きがありませんよね。

インフレが起きているのに、金利は上がらない。
つまり、国の借金は目減りする一方、貯蓄が大好きな日本人の預貯金は全く増えない(むしろインフレで価値が下落している)、現代のインフレではそんな現象が起きています。
財政健全化政策『アベノミクス』
今回は『アベノミクス』の真の狙いついてお話しをしていきました。
- アベノミクスの真の狙いは『国の財政健全化』
- アベノミクスは『国の借金』を目減りさせている
- アベノミクスは『国の保有資産の価値』を上昇させている
- インフレ期にも関わらずなぜか金利が上昇していない
コロナ禍で経済がダメージを受け、若干流れは鈍くなるかもしれませんが、大きな方向性は変わりません。
むしろ、アフターコロナでインフレがさらに加速する可能性も秘めています。
安倍前首相は総理大臣の座を退きましたが、菅政権は『安倍政権の継承』を謳っていますので、引き続き方向性は変わらないでしょう。
今回まとめたポイント、実はこれを利用するかしないかが、前回お話しした貧富の格差につながってきます。
情報を取り逃すことなく、現代のインフレの特徴を理解し活用していきましょう。
次回は、インフレが大きくなっているにも関わらず、なぜ金利が上がらないのか、お話ししていきます。